「院長の独り言」年度別

「院長の独り言」を時系列でご紹介しています。鍼灸・東洋医学に対してもっと身近に感じていただこうと、一般の方にわかりやすく鍼灸・東洋医学にまつわるトピックを中心にお届けします。民間薬草や健康食材にまつわる話、鍼灸・東洋医学・健康に関する一般書などもあわせてご紹介いたします。

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2008年1月~6月の「院長の独り言」

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鍼と針(2008年6月)

「はり治療」の「はり」という字には鍼と針とがあります。

大漢和辞典(藤堂明保編 学習研究社)によると

1.皮や布地などを縫うためのとがった道具。ぬいばり。

2.漢方治療の一つ。

3.はりのように細長くて先のとがっているもの。

漢方医術で治療に用いるはり。転じて縫いばり。

このように鍼も針も両方「縫いばり」、「治療用のはり」の意味があり全く同じ意味つまり異体字(同じ言葉に異なった漢字があるもの)です。 ただ日本では慣習的に「縫いばり」には「針」の字が、「治療のはり」には「鍼」の字が多く使われています。

「はり治療」で「はり」を刺すと、患者さんによるのですが敏感な方だと重だるくなったり、温かくなったり、ときには何かが流れるような感じがする事があります。

これはよい反応なのですが、「鍼」という字はもともと金と咸(感じる)からできた会意文字なので、もしかしたら、治療の為「はり」を刺すと何か身体に感じるというところから「鍼」の字を治療のはりに使うようになったのかもしれません。

そうだとすると「はり」という字ひとつにもに込められた思いがあるようで面白いですね。

桃太郎は金太郎?~昔話と東洋思想・五行説との関係~(2008年5月)

現代においては大分薄れてはいますが、東洋的なものの見方考え方というのが昔から私達に大きな影響を与えてきました。もちろんその中には意味の有るものもあれば意味の無い迷信のようなものもありますが・・・。

日本に伝わる桃太郎のような昔話のなかにも五行説などの東洋思想の影響が深く関わっているとされています。

五行説というのはすべてのものは木・火・土・金・水の五気により成り立っているというものです。

桃太郎が生まれた桃は五行説では金、お供の申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)は方位でいえば西の方角でこれも五行説で金なのです。

桃太郎って金太郎?って思うぐらい金と繋がっていますね。

一方、鬼は方位でいえば鬼門(丑・寅)つまり北東の方角です。

日本の鬼はウシにような角をもち、虎柄のパンツを穿いていますが、この鬼門・丑(ウシ)寅(トラ)からきています。

鬼門である北東の方角は五行で土であり、五行の相生関係により土から金が生まれるため、金(桃太郎)が強くなると土(鬼)が弱くなるというふうに五行で説明する考え方があります。

まぁ、ここまでくると少しこじつけの様な気もします。

北東は八卦の艮で考えると土ですが干支の丑寅で考えると丑は土ですが寅は木になります。

まぁ五行が木でも五行の相克関係により金(桃太郎)が木(鬼)を切り倒すので変わりませんが・・・。

こじつけのようなところも有りますが、桃太郎を東洋思想でこんなふうに考えるのも楽しいものです。

桜と桜肉(馬の肉)~桜肉は筋肉や骨を作る~(2008年4月)

季節も4月に入り札幌もすっかり春らしくなりました。

東京など関東ではもう桜も散ってしまったようですが、札幌は東京のだいたい1ヶ月遅れr月下旬から5月上旬に桜の季節になります。

桜といえば話は変わりますが、馬の肉を「桜肉(さくら肉)」と呼びますが何でなんでしょうね。

調べてみるといろいろ説があるようで、馬刺しの肉がきれいなさくら色になるからという説がひとつ。そして桜の咲くころ、4月から5月にかけてが一番おいしいからという説があるようです。

ちなみに中国明の時代の『本草綱目』によると馬の肉には筋肉や骨を成長させ身体を壮健にするという働きが書かれています。

歌手「ケツメイシ」の名は漢方の生薬「決明子(けつめいし)」から(2008年3月)

先日、何年ぶりかでカラオケに行きました。

友人がケツメイシの「さくら」を歌ってました。

いい曲ですよね~。

ケツメイシ・・・。

なんか聞いたことある名前だなと思って考えてみたら漢方の生薬と同じ名前でした。

調べてみたらグループの名前の由来は、中国で使用されている薬草「決明子(けつめいし)」で、薬草の効用になぞらえて「全てを出し尽くす」、「見えない神秘的な」という意味が込められており、メンバーの中の2人は薬剤師免許も取得しているんだそうです。

ちなみに決明子(けつめいし)はマメ科の一年草のエビスグサの種子で中医学的には清肝益腎・キョ風明目、潤腸通便の働きがあります。

実は、決明子(けつめいし)は日本でも昔から健康茶「ハブ茶」として飲まれていました。

エビスグサの種子を乾燥させ、軽く炒ったものを、お茶にします。

効能としては、疲労回復、食欲増進、便秘、腹部膨満感、胃弱、胃腸の調子が悪い時、眼精疲労、目の充血、神経痛、リウマチ、高血圧の予防などです。

でも、漢方の薬草の名前をグループの名前にするなんて面白いですね。

『模倣の時代』(板倉聖宣著、仮説社)(2008年2月)

先日、『模倣の時代』という本を読みました。 この本は日本における脚気に対する歴史を述べたものです。

私達の多くの脚気に対するイメージは木槌で膝を叩いて足が上がる(膝蓋腱反射)とかビタミンB1の欠乏によって起こるとかいうものですが、脚気は恐ろしい病気で昔は多くの人が亡くなりました。

本書は『どんな人、どんな制度が創造性を発揮し、だめにしたか』という副題にも書かれている通り、どのような科学的態度でなければいけないのか、それを疎外するのに多くの場合党派性が関わっており優等生ほどその党派性に束縛されやすいなど脚気の問題を通してどのような科学的態度が必要かを述べた本です。

脚気についての概略を述べると、脚気は下肢のむくみや痺れを起こし、最後は脚気衝心といい非常に苦しんで心不全を起して亡くなる病気です。

明治37年の日露戦争のとき戦闘の死者数は48,428人で傷病者は352,700人そのうち脚気患者は212,700人で脚気による死者は27,800人(数字は史料により異なるようです)でした。

脚気による死者の多さが解かります。

脚気は幕末から多く広まった病気で、米食を中心とする東アジアに見られる病気です。

明治になってから政府の方針で漢方医学から西洋医学に切り替わりましたがその当時の西洋医学ではよく治すことが出来ず、脚気専門の漢方医の遠田澄庵など食事療法も重んじる経験を積んだ漢方医の方がよく治していたようです。

明治11年政府により脚気病院が設立され西洋医学と東洋医学のどちらが脚気を治せるか競わせようということになりました。

西洋医学のほうが優れているという政府の思惑通りの結果が出ず、結果はうやむやになってしまいましたが・・・。

その後、高木兼寛や堀内利国などが白米食が脚気の原因とし、志賀潔・都築甚之助・遠山椿吉・鈴木梅太郎等の研究へと続くのですが漢方医の主張と重なるということで青山胤通・森林太郎等によって長い間否定され続け日本の脚気研究が遅れる要因となりました。

その後、西洋で脚気がビタミンB1の欠乏によるものと確定されるとそのような方向性になりましたが、西洋には無い病気なので日本が独自性を発揮するチャンスだったのにそれを逃したことは残念です。

興味のある方は読まれてみてはいかがですか。

東洋医学・鍼灸医学を学ぶ効用~2008年新年のご挨拶にかえて~(2008年年始)

新年明けましておめでとうございます。

私も鍼灸師になって今年で10年という節目の年になりました。まだまだ至らぬところが多々あると思いますが日々努力して少しでも皆様方のお役に立てるよう頑張りたいと思っています。

最近、東洋医学・鍼灸医学を学んで本当に良かったと特に思うようになりました。

東洋医学・鍼灸医学を学ぶ効用は3つあると思います。

1つ目は、健康に役立つということ。

2つ目は、東洋医学・鍼灸医学は伝統文化なのでそれを学ぶことは日本の文化・東洋の文化を学ぶことになるということ。

3つ目は、東洋医学・鍼灸医学はその根底に易や老荘思想などの東洋思想・東洋哲学の深い哲理によって打ち建てられています。

この哲学を学ぶことは、混迷する現代を生きていく為の大きな助けに必ずなると思います。

肩肘を張らない、こころも身体も軽くなる生き方、それは健康になる生き方だとも思います。

皆様にとって、今年も良い年になりますように!

本年も宜しくお願い致します。

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