「院長の独り言」年度別

「院長の独り言」を時系列でご紹介しています。鍼灸・東洋医学に対してもっと身近に感じていただこうと、一般の方にわかりやすく鍼灸・東洋医学にまつわるトピックを中心にお届けします。民間薬草や健康食材にまつわる話、鍼灸・東洋医学・健康に関する一般書などもあわせてご紹介いたします。

「院長の独り言」年度別

2019年1月~6月の「院長の独り言」

院長の独り言メニューへ戻る

『血液型で分かるなりやすい病気なりにくい病気』(永田宏著、講談社ブルーバックス)(2019年6月)

血液型で分かるなりやすい病気なりにくい病気本書『血液型で分かる なりやすい病気・なりにくい病気』はタイトル通り、血液型でなりやすい病気なりにくい病気がわかるという内容です。

血液型で何かが分かるというと我々日本人は、血液型占い(血液型性格診断)を思い浮かべますが、血液型占いは科学的根拠は無いとされており、血液型占い自体も日本、韓国、台湾ぐらいでしか行われていないようです。

本書による、血液型によってなりやすい病気なりにくい病気があるというのは科学的根拠がある話で、全ての病気について血液型による差があるわけではありませんが、一部の病気に関しては統計学上有意の差があるようです。

ちなみに血液型の割合は日本では、A型38.2%O型30.5%B型21.9%AB型9.4%で大体4対3対2対1だそうですが、地球規模でみると西側はA型の割合が高くなり、東側はB型の割合が高くなる、また北側はA型の割合が高くなり、南側はO型の割合が高くなるそうです。

で、具体的な血液型と病気の関係ですが本書によると、膵臓がんのなりやすさはO型に比べてA型は1.32倍、B型は1.72倍、AB型は1.51倍だそうです。

もちろんガンの発病の要因はタバコやアルコール、ストレスなど様々あるわけで、それらのリスクを軽減することが1番大事ですが、膵臓がんの場合何らかの要因で血液型の違いによる有意の差があるようです。

その他本書で述べられたものを列挙してみると、
胃がんはO型に比べてA型は1.20倍がんになりやすい
O型は消化器潰瘍になりやすい
静脈血栓症、肺塞栓症などの血栓がO型はできにくく、A型はできやすい
B型はマラリアで重症化しやすく、O型は他の血液型と比べると重症化への抵抗性がある
O型はコレラに弱い
ピロリ菌はO型は感染しやすくA型は感染しにくい
などです。

血液型の違いは何故生じるのかというと、赤血球の表面にある抗原の違いだそうです。

この抗原は糖鎖という糖からできた物質で赤血球だけでなく、消化管や皮膚、肺、気管支、腎臓、膀胱などや、唾液などの体液にも含まれる物質だそうで、唾液からでも血液型が分かるのはそのためだそうです。

血液型の違いを東洋医学的にどう解釈するのかは難しい問題ですが、例えばO型は消化器系が弱いと仮定するならば、素体として脾虚の傾向があるといえるかもしれません。

糖鎖は何らかの情報の遣り取りをして差異を生み出していると思われますので、将来的には血液型も東洋医学的な体質を考えるうえでの何らかのヒントになる時代が来るかもしれませんね。

△ページTopへ戻る

『閃く経絡』(ダニエル・キーオン著、医道の日本社)(2019年5月)

閃く経絡近年は何事にもエビデンス(科学的根拠)が重要視される時代といえます。
東洋医学(伝統医学)と西洋医学(近代合理科学に基づく医学)は理論体系が全く異なるので、なかなか西洋医学的に説明することは難しいと言えます。
そんな中で東洋医学者としては大きく分けて2つの立場があると思います。
東洋医学と西洋医学は本来異なるものなのだから独立独歩で東洋医学は独自の道を行くべきというもの。
もう一つは東洋医学と西洋医学が共通する部分を見つけて融和する道を探るというもの。
昔から東洋医学を何とか西洋医学で説明しようとした人達もいました。
鍼で言えば、ゲートコントロール理論や内臓体壁反射などの鍼の刺激が神経に作用して治療効果を得るというものや、鍼の刺激が筋肉のいわゆる凝りを解消し血行などが良くなるというもの、最近は鍼の刺激が筋膜に作用していると言われています。

本書『閃めく経絡(ひらめくけいらく)―現代医学のミステリーに鍼灸の“サイエンス"が挑む!』は後者の立場で鍼の効果を西洋医学的に発生学の立場から説明したとても意欲的な本です。
著者は医師でもあるダニエル・キーオン氏でキングストン大学で中医学と鍼を学び、北京で王居易医師に師事した英国人です。
内容を一言でいえば、「ファッシアが経絡である」ということです。
で、ファッシアが何かというと筋膜です。
ファッシアの日本語訳は筋膜ですが、単純に筋肉を包む膜だけでなく内臓を包む膜だったり、境界を作る結合組織がファッシアであり、それが経絡であると本書では述べられています。
個人的にとても面白かったのは、太極図を使ったファッシアの説明で、真ん中の陰と陽の境目、境界がファッシアつまり経絡である、というものでとても面白い視点だと思いました。
本書ではそのほかにも、東洋医学の精は神経堤細胞と関係しているのではないか、少陰経は腹膜後腔、太陰経は前腎傍腔、厥陰経は腹膜、横隔膜、心膜と関係しているのではないかなど興味深い視点がたくさんありました。

個人的には経絡イコールファッシアなのか、はたまた経絡という大きなものの一部にファッシアがはいっているのか、分かりませんが経絡を考える上での一つの大きな見識だと思いました。

△ページTopへ戻る

『欧米人とはこんなに違った日本人の体質』(奥田昌子著、ブルーバックス)(2019年4月)

本書『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防』でいう体質とは、遺伝的要因と環境的要因が絡み合って形成される性質であり、どの病気には罹りやすく、どの病気には罹りにくいかを決める性質です。
もちろん同じ日本人でも一人一人の体質は同じではありませんが、民族や人種など大きな集団の単位でみると共通している部分があり、民族や人種ごとに体質が異なるということを本書では述べています。

例えば本書によると日本は世界的に皮膚がんが少ない国の一つで皮膚がんが多いオーストラリアやニュージーランドの100万分の1の発症率です。
また、世界の肝臓がんの4分の3が中国、インド、日本を含む東アジア、中央アジアだそうです。
つまり、同じ病気でも国や人種によって発症率や原因、症状などに違いがあります。
米国では人種による体質の違いを踏まえた医療の提供をしているそうです。

日本人と欧米人は体質に違いがあるので欧米人に当てはまることが必ずしも日本人に当てはまるとは限らない、日本人の体質に合う、日本人のための医療、健康というものを考えていかなくてはならないということです。
本書によると肉やバターなど動物性脂肪を多く摂っている欧州人の中で、赤ワインを多く摂るフランス人は心臓病の死亡率が欧州で一番低い、それで赤ワインが心臓病に良いと日本でもブームになりましたが、日本人は欧米人と比べるとアルコールを分解する酵素の働きの弱い人が多く、逆にアルコールによるリスクの方が高いと思われます。
また、動脈硬化を防ぐのにオリーブ油が良いと地中海料理が参考にされていますが、欧米人と比べると日本人は皮下ではなく内臓に脂肪が付きやすいので油も必要以上に摂りすぎると欧米人よりもリスクがあるということです。

私達、東洋医学者も体質ということを重要視していますが、その見方とは異なった西洋医学的観点から体質というものを捉えており、非常に興味深く、面白く読ませて頂きました。

△ページTopへ戻る

『中国神秘数字』(葉舒憲・田大憲著、鈴木博訳、青土社)(2019年3月)

本書『中国神秘数字』で述べられている神秘数字とは、数字本来の計測的な数字の意味の他に文化的な意味が付与されている数字のことで、それを神秘数字と述べています。

「1」、「2」、「3」の数字は世界の多くの文化圏で重要な意味を持ちますが、それ以上の数字については文化圏ごとに数字の重要度が異なるようです。

キリスト教文化圏では「7」という数字が特別な意味を持っています。
ノアの箱舟では動物を7つのつがいづつ乗せたり、ヨハネの黙示録の7つの封印など、聖書のなかには「7」という数字が再三出ててきます。

中国文化圏では「5」と「9」が特別な意味を持ちます。

「5」は陰陽五行思想があるため、五行に関係した言葉も多く「5」という数字は歴史的に中国文化の中で特に重要な数字であります。

「9」は陽が極った数で完全、多数の意味があり、また「久」という字と音が似ているので、長く続くという良い意味があります。
『黄帝内経』の『素問』も『霊枢』もそれぞれ81篇から成りますし、『老子』も81章から成ります。
重陽の節句(9月9日)が中国で大事にされたのも長く続くことを願ったものなのでしょう。

中国文化の影響を大きく受けた日本においては逆に「9」は「苦」と音が似ているので苦につながるとして「9」は縁起の悪い数字です。
桃の節句(3月3日)や端午の節句(5月5日)は日本で広まったのに重陽の節句(9月9日)が日本に広まらなかったのも頷けます。
「9」という数字に対して日本と中国で異なるのも面白いですね。

もっとも近年は「8」という数字が、中国国内で重要になっています。
「8」の発音が「発」と似ているので「発財」で「8」がお金儲けにつながるというものです。

文化によって数字の意味が異なるというのも面白いですし、同じ文化でも時代によって数字の意味が変わることがあるというのも面白いですね。

△ページTopへ戻る

ガッテン!「慢性痛しびれが改善!逆子も治る!?東洋の神秘“はり治療”SP」(2019年2月)

2019年2月20日(水)午後7時30分から放送(再放送 2019年2月23日(土)午前0時25分予定)のNHK ためしてガッテン は「はり治療」についての特集です。

今回は、ガッテン流に科学の目で、はりの世界を大解剖するということで、私も非常に楽しみにしています。

ここ最近、鍼灸についてテレビで特集されることが多くなってきました。

鍼灸について皆様に知っていただく良い機会として、いち鍼灸師としてとてもうれしく思います。

鍼灸イコール肩こり・腰痛という認識ではなく、鍼灸には様々な不調に対応するポテンシャルがあるということを少しでも多くの方々に知っていただきたいと思っています。

現代は薬物治療、サプリメントなども含め有用物質を体に取り込む療法が中心ですが、ポリファーマシー(多剤服用)の問題などもあり、もっと物理療法の割合が増えるべきだと思います。

運動、リハビリテーション、温熱など様々な物理療法がありますが、その中でも鍼灸は様々な症状に対応できる有用な手段です。

そのことを知っていただくためにも、このようなテレビなどのメディアで鍼灸がもっともっと特集されることを切に望みます。

NHK ガッテン

詳しくは「NHK ガッテン公式サイト」をご覧ください。

△ページTopへ戻る

2019年年始のご挨拶 ~初心に帰る一年に~(2019年1月)

あけましておめでとうございます。

本年も無事にお正月を迎えることができました。

これもひとえに太玄堂鍼灸院を応援してくださる家族、友人そして患者の皆様のお蔭だと思っております。

少しでも皆様方にお返しができるよう本年も精進したいと思っています。

また皆様にとって本年も良い年でありますよう、心よりお祈りいたします。

本年には元号も変わり、これからの世の中もどんどん変わっていくことを予感させますが、東洋思想・東洋医学・鍼灸に出会った頃の感動を常に忘れないように、またその時に抱いた志を常に高く保ち続けるために、本年は初心に帰る一年にしたいと思っています。

2019年1月1日 太玄堂鍼灸院 福田毅

△ページTopへ戻る

院長の独り言メニューへ戻る