「院長の独り言」年度別

「院長の独り言」を時系列でご紹介しています。鍼灸・東洋医学に対してもっと身近に感じていただこうと、一般の方にわかりやすく鍼灸・東洋医学にまつわるトピックを中心にお届けします。民間薬草や健康食材にまつわる話、鍼灸・東洋医学・健康に関する一般書などもあわせてご紹介いたします。

「院長の独り言」特別編

逆子の鍼灸治療について(2005年10月)

逆子の灸をご存知ですか?

今回は婦人科(女性の方特有の症状)についての院長の独り言を取り上げます。一口に婦人科といっても多くの範囲にわたりますが、その中で鍼灸治療の有効性がよく知られているものの一つとして逆子の灸(きゅう)があります。多くの鍼灸師や助産師さんなどが逆子の灸を指導しておられます。逆子の灸は副作用が無い優れた治療法の一つですので、逆子で悩んでいらしゃるかたは受けてみられたらいかがでしょうか。

ということで今回は逆子について述べたいと思います。

婦人科の特徴

婦人における月経・妊娠・出産が婦人の生理的特徴であり男子と異なっている点です。これらの機能は臓腑・経絡・気血などと胞宮(ほうきゅう:子宮のこと)との関係によって成り立っています。これらの中で特に重要なのは五臓の中の腎・肝・脾の三つの臓と衝脈(しょうみゃく:奇経という特殊な経絡の一つ)・任脈(にんみゃく:奇経という特殊な経絡のひとつ)という経絡です。

逆子について

逆子は正式には骨盤位といいます。自然に戻ることもありますが、戻らずそのまま逆子で出産ということもあり、その場合は難産になる可能性があるので逆子体操などで頭位(正常な状態)に戻すよう病院などでも指導されます。

東洋医学的には母体のバランスが整っていれば胎児は正常な位置になるのですが、母体のバランスが崩れていると胎児にとっては逆子の状態のほうが楽なので逆子になるのだと考えます。ですから母体のバランスを整えれば胎児は自然と元に戻ります。

中医学的に分類すれば、気滞(きたい:気の停滞)によるもの、脾虚湿盛(脾虚湿盛:脾の弱りにより湿邪が停滞する)によるもの、気血両虚(きけつりょうきょ:気と血の弱り)によるものなどに分けられますので、 それぞれのバランスが整うように治療します。

逆子の治療

当院での逆子の治療は、打鍼という刺さない鍼で上腹部を軽く刺激する治療法、逆子の灸、手足に通常の鍼をする治療法などのなかからその患者さんにとって一番よいと思われる治療法を選択して逆子の鍼灸治療を行います。

ツボについて

通常逆子の灸として使われるツボは至陰(しいん)三陰交(さんいんこう)です。ご家庭でお灸をしてもらうような場合も基本的にこれらのツボにしてもらうことになります。

当院での治療ではこれ以外でも必要と思われるツボがあれば適宜使用します。例えば至陰穴が有効な場合というのは腎の臓に関連しているということなので、腎の臓に関係のある他のツボのほうが有効であればそちらのほうを使用するということです。

三陰交ですがこれは面白いツボで、女三里ともいわれ昔から女性の血の道症など婦人科疾患で広く使われるツボです。脾経・肝経・腎経の三つの経絡が通るツボで、血を補うのにも瀉するにも両方に使われます(正反対の働きが同じツボで出来るのは面白いですね)。また三陰交は堕胎のツボでもあるので、鍼で瀉法を行うときには気を付けなくてはいけないツボです。

逆子の鍼灸治療のまとめ

今回の院長の独り言は逆子について述べましたが如何だったでしょうか?

他の婦人科疾患についてもいつか述べたいと思いますので、お楽しみに。

※参考文献:『中医診断と治療』(神戸中医学研究会編訳、燎原)

院長の独り言特別編メニューへ戻る

△ページTopへ戻る