鍼灸師になりたい、鍼灸を勉強したい方のために

鍼灸師になりたい、鍼灸の勉強をしたいという方のために、「鍼灸とは」、「鍼灸の専門学校に入る」、「鍼灸の国家試験を受ける」、「職業として鍼灸師をめざす」、「家族や身近な人のために、鍼灸学校で東洋医学を学ぶ」、「鍼灸院や鍼灸学校とは」という観点でお話いたします。

鍼灸専門学校、鍼灸院とは

鍼灸専門学校、鍼灸院ってどんなところ?

鍼灸専門学校の受験は難しい?

金井:こちらは30度を越す日が続き、まだまだ残暑が厳しいという感じですが、北海道の天候はいかがですか?Yahoo!の天気情報を見る限り25度前後の陽気のようですが・・・・・・

福田:昼間はまだ暖かいですが、朝晩はちょっと肌寒くなりました。季節としては秋に入ったところでしょうか。

金井:なるほど。もう秋って感じなんですね。9月の院長の独り言では、「味覚の秋」にちなみ、東洋医学と味覚の関係から「四気五味」ってテーマを選んでいましたが、喫茶団らんでは、「読書の秋・勉強の秋」にちなみ、鍼灸学校への受験、鍼灸学校時代のこと、はり師きゅう師の国家試験のこと、さらに治療院で働いていたときのこと、あるいは、鍼灸院で修業していた頃のお話をお伺いしたいと思います。

福田さんは、確か北海道鍼灸専門学校出身でしたね。 僕が聞いたところによると、医療系の専門学校の受験というのは、昔に比べて年々難しくなっているとのことですが、福田さんが受験した頃はいかがでしたか?

福田:そうですね。僕が受験したときは倍率も高く難しかったような記憶があります。

金井:どのような受験科目がありましたか?

福田:僕の場合、一般常識と小論文と面接でした。今は小論文と面接のみのようですね。

金井:倍率はいかがでしたか?東京の専門学校だと、10倍前後のところもあるようですが。

福田:正確には憶えていないのですが、僕が受験したときは5倍ぐらいだったんじゃないかと思います。でも今は、規制緩和により鍼灸学校の数が増えたので、学校を選びさせしなければ鍼灸学校への入学はそんなには難しくないと思います。ただ学校によっては国家試験の合格率を上げるために成績の悪い人は国家試験を受けさせないところもあるみたいなので、ちゃんと調べてから学校を選んだほうが良いと思います。

金井:当時は狭き門だったんですね。そうですか、規制緩和で学校が増えたんですか。今、医療系専門学校を目指す人が多いと聞きますが、学費もかかるようだし、目的意識をもって受験しないと大変ですね。これから受験を目指す後輩に向けて、どのようなことに注意して受験勉強をすすめたらいいかアドバイスをお願いします。

福田:まず、鍼灸や東洋医学が好きになること。学校に入学してから3年間、卒業してからも一生勉強になります。好きでないとなかなか続かないです。次に医療の一角を担うので人間性が求められます。人間性を深めましょう。人間性といっても目に見えないものなので、面接のときなどはその人の言動によって判断されます、ある程度常識的な言動をしましょう。ちょっとはずれているぐらいなら愛嬌があっていいですが、あまりはずれすぎていると医療人より芸術家向きといわれてしまいます(笑)

鍼灸専門学校ってどんなところ?

金井:では次に、北海道鍼灸専門学校入学後について、お話を伺おうと思います。北海道鍼灸学校時代の思い出はありますか?

福田:年一回レクリエーションがあって、その年によって違うのですが、ボーリング大会や焼肉を野外で食べたりという行事がありました。その資金の一部に、学期末の試験で生徒が赤点(落第)を取ると追試料を払って追試を受けるのですが、その追試料が使われてました。僕も二年生のときには赤点を取って出資していたのでこのときは元を取るためにいっぱい焼肉を食べました(笑)。

冗談はさておき、学生時代は「東洋はり医学会」という団体の勉強会に出席してました。いまの僕のやり方とは基本的には違いますが、このとき学んだことは今の自分にとって役に立っています。あと、学生時代は希望と不安が半々ですよね。そんななかで友人と情報を交換したり助け合うのはとても大事なことだと思います。

金井:なるほど、楽しい行事と、赤点の恐怖、元をとるためのやけ食いですか(笑)そのようなことも学生でなくては味わえない楽しい思い出ですね。それと、やはりどこにいっても友人との情報交換や助け合いは大切ですね。良き友との交わりは、卒業後も続きますし、一生ものですからね。大切にしなくては。 話は変わりますが、鍼灸学校ではどのようなことを学ぶんですか?

福田:基本的には、国家試験の試験科目(医療概論、衛生学・公衆衛生学、関係法規、解剖学、生理学、病理学概論、臨床医学総論、臨床医学各論、リハビリテーション医学、東洋医学概論、経絡経穴概論、東洋医学臨床論、はり理論、きゅう理論)を中心に学ぶことになります。そのほかのカリキュラムはその学校で独自に決めるので学校によっては面白い授業があるところがあります。

金井:解剖実習なんてのもあるんでしょうか?

福田:あります。僕の場合、札幌医科大学ですでに解剖実習をされた後の献体を一度見せていただきました。

金井:はじめて実物を見るとびっくりするでしょうね。僕は小学生時代、科学クラブに入っていて、鉱石ラジオを作ったりしていました。ある日カエルの解剖実習をすることになり、いつやるんだろうとドキドキしていました。結局解剖実習はお流れになってしまったのですが、もし解剖実習をして、それに慣れたとしたら今頃外科医になっていたかもしれません(笑) ちょっと話がそれましたが、専門学校で学んだ科目の中で、特に面白いなと思ったものはありますか?

福田:もともと東洋医学に興味があったので、東洋医学概論が一番面白かったですね。

金井:鍼灸っていうとツボが大事ですよね。ツボっていうのは、いったいいくつあるんでしょうか?

福田:何を基にするかで数は異なりますね。「黄帝内経」では天と人とは相関しているとし、十二経絡は一年十二ヶ月に対応し、ツボの数三百六十穴は一年三百六十日に対応しているとしています。しかし「黄帝内経」ではツボの名前が出てくるのは百六十穴で、その後「十四経発揮」で三百五十四穴になり、現在公認されているのは三百五十一穴でしょうか。しかしそれ以外のツボを奇穴といい、日々発見され数が増えていますし、圧痛のある反応点を阿是穴といいます。ですからツボというのは固定化されたものではなく、ある意味、体全体がツボで、そのなかで診断点・治療点として有効なのをツボとして治療に使うということだと思います。

金井:学校を卒業すると、ツボの位置などは適切にわかるようになるものですか?僕の知り合いの鍼灸師の人が言っていたのですが、人によってツボの位置が変わるってことを聞いたんですけど、それは本当ですか?

福田:本当です。ですからあくまで学校で習ったツボの位置は基準点であり、その付近で一番ツボの反応(発汗、硬結、陥下など)のある点がそのツボの位置になります。

金井:なるほど。どうも杓子定規にはいかないようですね。やはり経験が必要ということでしょうね。最後に鍼灸の専門学校で学んでよかったことは何ですか?

福田:解剖学や生理学などの西洋医学から東洋医学まで幅広く体系的に勉強できることですね。一から自分ひとりで全部勉強するのは大変ですが、学校で一通り勉強していると、あとで自分で勉強するとき楽ですね。

鍼灸治療院で働く

金井:鍼灸の専門学校を卒業した多くの方は、将来独立開業を目指しているのではないかと思うのですが、以前福田さんから、学校を出てすぐ開業するのは難しいと聞いたような気がします。実際すぐに開業するのは難しいのですか?

福田:難しいと思いますよ。特に僕の場合は昼間は蕎麦屋に勤めて夜間に鍼灸学校に通っていましたので学校卒業当時は治療技術も未熟ですし、患者さんとの対応の仕方もわからず、わからないことだらけでした。それで治療院に勤めました。

金井:そうですか。蕎麦屋さんと掛け持ちですか。さすが蕎麦好きの福田さんらしいですね(笑)

それはそうと、福田さんの場合も、東京の治療院、大阪の治療院に勤務していたわけですが、実際、治療院に勤務していてよかったことは何ですか?

福田:一番勉強になったのは患者さんとの対応の仕方ですね。東京の東洋堂整骨院というところに勤めたのですが治療技術も含めここでは本当に勉強させてもらいました。

金井:その後、奈良で名医と名高い藤本蓮風先生のところで修業を積むわけですが、なぜ内弟子になったんですか?

福田:僕はもともと東洋医学にあこがれてサラリーマンを辞めて鍼灸師になったのですが、本格的に東洋医学を学ぶには、僕の場合内弟子になる必要があると思ったんですね。三十歳を過ぎてから内弟子になることに抵抗もありましたが、思い切って内弟子になりました。

金井:藤本蓮風先生のところで修業をしていて、感動したことがあったら教えてください。

福田:当たり前のことかも知れませんが、実際に東洋医学的に診断して東洋医学的に治療していることですね。それと通常の治療院には来ないような、例えば末期癌の患者さんやインフルエンザで高熱の患者さんなどを東洋医学で実際に治療して効果を出していることですね。そういうのをいろいろ見せていただきました。実際に元気になっていく患者さんと接して感動したのを覚えています。

金井:それは経験をしましたね。やはり良い手本となる先生のもとで修業を積むことは、多大な恩恵を受けるようですね。

福田:そうですね。東洋医学の有効性を実際に見せてもらいました。

金井:今回は秋ですから、これだけは聞かないといけないと思っているのですが、奈良の鍼灸院の先輩やお仲間とおいしい食べ物やさんに行ったエピソードはありますか?それと、ついでに面白失敗談などがあったら教えてください。

福田:美味しい食べ物といえば、大阪の串かつなんか美味しかったですね。最初たれをどうするかわからず、二度づけ禁止も何のことかわかりませんでしたね。思わずやってしまったときは、周りから奇異の目というか軽蔑の眼というか、そういう目で見られたのを覚えています。

金井:なるほど。面白いですね。ところ変わればってやつですね。実際、地元の人しかわからない習慣というのは、はじめ戸惑うのも無理のない話なんですが、なんとなくこちらが悪いんじゃないかっていう気持ちになるのは、日本人の性なんでしょうか。

生涯教育として東洋医学を学ぶ

金井:生涯教育として東洋医学を学ぶ意義についてお話を聞きたいと思います。別のページでもお話していますが、ここ数年健康番組がさかんに放送されています。僕が見ていて、すごくためになるものもあれば、ちょっと偏り過ぎている情報だなって感じるものもあります。後者の一例として、「水を大量に飲むダイエット」があります。

東洋医学におけるダイエットの考えかたは、別の機会に具体的に伺いたいと思いますが、これほど健康に関心の深い時代ですから、独立開業しないまでも、家族や自らの健康を深く知るため、東洋医学を学びたいというかたも多くいらっしゃるのではないかと思います。

このような要望に対して、鍼灸の専門学校で学ぶ意義をどのように考えますか?

福田:健康は誰のものでもなく私たち自身のものですし、すべての幸せの前提となるものです。その為に本格的に健康や東洋医学について学ぶというのはとても良いことだと思います。東洋医学を理解していると、体質によって、あるいは今の状態では、水を大量に飲むと危険だということがわかってきます。健康に関する情報に流されないためには、東洋医学などを体系的に学び、正しい目で判断できるようになることが必要ではないかと思います。

金井:なるほどそうですね。東洋医学がもっと身近になるといいですね。当サイトでも、東洋医学の基礎講座を用意していますので、是非活用いただければと思います。今回は、前回とは違い、少しかたいテーマになってしまいました。読書の秋、勉強の秋というくらい、秋は物事を深く考えるのに良い季節ですし、読者のみなさんのお許しを得るとして、今回のテーマが、鍼灸の専門学校に興味があり、鍼灸師の資格試験に興味があるみなさんの一助になればと思います。

今回も長い間お疲れ様でした。

福田:お疲れ様でした。

(※2006年9月掲載)

△ページTopへ戻る