かんたん中医学講座

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かんたん中医学講座 第3回 「経絡について」

みなさん、お久しぶりです。福田です。ながらく「かんたん中医学講座」の講義をお休みして申し訳ありません。

今後、残りの講義も少しずつ進めてまいりますので、気長にお付き合いください。

今回は「生命場のルート」に関するお話です。

それでは、さっそく、かんたん中医学講座 第3回目「経絡について」の講義をはじめます。

経絡について

「経」は「たていと」、「たて」を表し、そこから「おおすじ」、「不変の道理」などの意味が、「絡」は「まとう」、「からむ」、「つなぐ」、「つながる」などの意味があります。

いわば経絡とは経脈という大きく重要な幹線道路と絡脈という経脈から網の目に出た枝道を合わせたものです。

その道路に流れるのが、「気」という、いわば生命エネルギーのようなものです。

絡脈はその道路の大きさによって「十五絡」、「浮絡」、「孫絡」があり、経脈は、「正経十二経脈」と「奇経八脈」の二つに大きく分かれます。

正経十二経脈

正経十二経脈とは手太陰肺経、手陽明大腸経、足陽明胃経、足太陰脾経、手少陰心経、手太陽小腸経、足太陽膀胱経、足少陰腎経、手厥陰心包経、手少陽三焦経、足少陽胆経、足厥陰肝経の12です。

それぞれの経絡の名前についている手・足はその経絡が手を通るか足を通るかを表し、陽明・太陽・少陽、太陰・少陰・厥陰の3陰3陽はそれぞれ陰陽の量を表し、名前についている臓腑は経脈がその臓腑と関係が深いことを表します。

ちなみに陽の多い順から陽明>太陽>少陽、陰の多い順から太陰>少陰>厥陰です。

『黄帝内経』(素問・至真要大論篇)に、陽明は両陽合わせて明らかなり、厥陰は両陰交わり尽きるなりとあります。

この十二正経脈は実は付帯する流れがあって、十二経別(十二経脈から身体の深部に別行する流れ)、十二経筋(十二経脈の流れと一連のつながりを持った筋肉群)、十二皮部(十二経脈の流れとつながりを持った皮膚)というのがあります。

奇経八脈

奇経八脈は、督脈、任脈、衝脈、陽キョウ脈、陰キョウ脈、陽維脈、陰維脈、帯脈の8です。

奇経とは何かというのは、難しいのですが、「正」は通常のもの、「奇」は通常ではないものという意味があります。つまり、奇経は通常ではない経脈ということになります。

『難経』では経絡から溢れた気を蓄えたり、足りない時は補う謂わばダムとしての働き、ある意味絡脈としての奇経八脈の働きについて言及しています。

また、鍼灸家にとっても気功家にとっても重要な書である李時珍の『奇経八脈攷』の陰キョウ脈の解説のところに張紫陽の『八脈経』からの引用があり、「およそ人にこの八脈あれども、倶に陰神に属し、閉じて開かざるなり。ただ神仙のみ、陽気を持って衝開する。」とあります。

人は奇経八脈を持っているけれどもおギャーと生まれた瞬間に閉じてしまう。

極論すれば奇経八脈はおギャーと生まれる前に主要である経脈謂わば、先天の経脈と言えるし、十二正経脈はおギャーと生まれた後に主要となる経脈謂わば、後天の経脈だとも言えるかもしれません。

もしそうであれば、奇経八脈の督脈は「諸陽の海」、任脈は「諸陰の海」、衝脈は「十二経の海」とも呼ばれ十二経脈に従属する面だけでなく主導する面もあることも理解できるような気がします。

経絡の発展の歴史

現在の十二経脈・十二経別・十二経筋・十二皮部の経絡学説は『黄帝内経』で完成されています。

※『黄帝内経』(霊枢・経脈)(霊枢・経別)(霊枢・経筋)(素問・皮部論篇)

1973年に中国の長沙馬王堆三号漢墓から『足臂十一脈灸経』『陰陽十一脈灸経』という経絡についての帛書が見つかりました。

十一経脈で現在の十二経脈より一つ少なく、現在より古い経絡学説とされています。

素問医学の世界』(藤木俊郎著、績文堂)にて著者は、『黄帝内経』(素問・経脈別論篇)などから、身体の前面を「陽明」、身体の側面を「少陽」、身体の後面を「太陽」、身体の内を「太陰」とした四経絡説が経絡の原型ではないかと述べています。

現代中医学においては経筋系統という考え方もあります。

経筋系統は十二経筋、十二経別、十二皮部を合わせたものであり、現代医学の解剖学での皮膚、皮下組織、筋膜、筋肉、関節包、関節軟骨、滑液胞、腱鞘、靭帯などを含めた総称です。

経筋系統では経筋病巣(筋肉・軟部組織の病変)を目標に治療を行うもので、通常の経脈の経穴を目標にした治療とは異なるという考え方です。

※『図解経筋学―基礎と臨床』(西田皓一著、東洋学術出版)

いずれにせよ、経絡学説は最初は簡単なものから現在のものに発展したということが分かります。

経脈の相互関係

十二経脈の流れは最初手太陰肺経から始まり手陽明大腸経、足陽明胃経と続き最後は足厥陰肝経に行き再び手太陰肺経に戻ります。

ですから、どの経脈どうしも繋がっているのですが、経脈どうしの繋がりには濃淡があります。

表裏関係

それぞれ臓腑にはペアの関係があり、それを基にした経脈どうしの関係です。

この関係は五行では同じ五行になります。

例えば手太陰肺経は肺の臓と密接な関係の経脈ですが、肺の臓は大腸の腑とペアの関係にあり、よって手太陰肺経は手陽明大腸経と表裏関係になります。

同名関係

三陰三陽で同名の関係。

例えば手太陰肺経は太陰ですので足太陰脾経とは同名関係になります。

陰陽交差関係

同名関係にあたる経脈の表裏の関係の経脈との関係。

ややこしいですが手太陰肺経を例にすると、同名関係の足太陰脾経の表裏の関係つまり足陽明胃経が、手太陰肺経の陰陽交差関係となります。

剛柔関係

これは五行の関係によるもので、ある陰経の相克関係にある陰経の陽経との関係。

例えば手太陰肺経であれば、相克する陰経は火克金で手少陰心経でその陽経は手太陽小腸経。

つまり、手太陰肺経の剛柔関係は手太陽小腸経。

母経の関係

五行の相生関係で母にあたる関係。

例えば手太陰肺経であれば土生金で足太陰脾経・足陽明胃経になります。

子経の関係

五行の相生関係で子にあたる関係。

例えば手太陰肺経であれば金生水で足少陰腎経・足太陽膀胱経になります。

克する関係

五行の相克関係で克する関係。

例えば手太陰肺経であれば金克木で足厥陰肝経・足少陽胆経になります。

表裏関係

五行の相克関係で克される関係。

例えば手太陰肺経であれば火克金で手少陰心経・手太陽小腸経になります。

子午関係

十二支を子を十二時に時計回りに配当したとき、時計の反対側との関係。

子に足少陽胆経、丑に足厥陰肝経、寅に手太陰肺経と経脈の流注順に経脈は十二支に配当される。

例えば手太陰肺経を考えると、足太陽膀胱経が子午関係となる。

支合関係

十二支の組み合わせの関係のひとつ。

例えば手太陰肺経(寅)を考えると、手少陽三焦経(亥)となる。

以上主なものを挙げましたが、このように経脈の相互関係を様々な方法で説明しています。

これで第3回目の講義、「絡について」を終わりにしたいと思います。ご精読ありがとうございました。

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