「院長の独り言」ジャンル別

「院長の独り言」をジャンル別でご紹介しています。鍼灸・東洋医学に対してもっと身近に感じていただこうと、一般の方にわかりやすく鍼灸・東洋医学にまつわるトピックを中心にお届けします。民間薬草や健康食材にまつわる話、鍼灸・東洋医学・健康に関する一般書などもあわせてご紹介いたします。

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「院長の独り言」ジャンル別~2023年~2025年に紹介した書籍

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鍼灸・東洋医学・医療関連書籍

『赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア』(2025年12月)

本書『赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア』(白川美也子著、アスク・ヒューマン・ケア)は、赤ずきんとオオカミをモデルにトラウマについて分かりやすく書かれています。

トラウマを知る入門書として良書の一つだと思います。

本書に書かれていたことを幾つかピックアップしてみると、

トラウマには単回性(災害など単回によるもの)トラウマと、複雑性(慢性的に複数回によるもの)トラウマがある。

単回性トラウマは再体験と過覚醒が多い、複雑性トラウマには麻痺や解離が多い。

トラウマ記憶は解消されないまま冷凍保存されているようなもので、脳の作業テーブルに大きな過去と小さな今があり、日常生活に使えるワーキングメモリが少ない状態、その為日常生活に困難をもたらす。

3つのF、何らかの出来事に遭遇した時には戦う(Fight)、逃げる(Flight)、固まる(Freeze)の3つの行動様式しかない、どれを選ぶかは自由だし、どれにも優劣は無いし、悪くない。

トラウマのケアには、先ず安全安心の確保が一番重要であり、次に感情や五感を徐々に解消し冷凍保存されたトラウマ記憶を過去の出来事へと再編集していく、次に社会と再結合する。

災害の被災者の約75%は徐々に日常生活に適応・回復する、約25%はうつ病、適応障害、物質依存、身体表現性障害などになる、被災者の約10%がPTSDになる。

トラウマの治療法として、認知行動療法、持続エクスポージャー法、EMDR法、STAIR療法など様々な方法の紹介。

自分でできるトラウマ解消法としてリラックス法、ツボ刺激、トラウマの言語化、ヨガ、瞑想などの紹介。

ストレスが様々な病を引き起こすことは良く知られていますが、複雑なもっと根深い心のストレス(PTSDのような)が病気や日常生活を快適に過ごすのを阻害する遠因になっていることもあります。

そのことについて知っていることは大事だと思います。

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『からだは嘘をつかない』(2025年11月)

A・ローエンはアメリカの精神科医で、フロイトの孫弟子になります。

精神分析の立場から心と体の関係性に着目し、バイオエナジェティックス分析というものを立ち上げました。

現代では心と体の関係性に着目した心理療法はたくさん有りますが、その初期のものの一つといえます。

本書『からだは嘘をつかない』(アレクサンダー・ローエン著、国永史子訳、春秋社)では、心と体の関係性についていろいろ書かれていますが、呼吸についての部分を少し紹介したいと思います。

ストレスがかかると人は(ダメージに対して身構えてるので)息を止めます。

そのため継続的にストレスがかかると、呼吸が浅くなる、つまり呼吸障害が起こります。

呼吸障害には2つのタイプがあり重症になると以下の症状がでるとされています。

①吸気障害

横隔膜が動かない、お腹が固くなる、胸はしぼんだ状態で固定される、代謝低下、周りの世界に閉じている、分裂気質タイプ、吸うことへの恐れ、表面からのエネルギーの撤退、心がダメージを受ける、吸気は生に対する積極性を表します、恐怖を解放し積極性を活性化する必要があります。

②呼気障害

胸は動かず横隔膜と腹が動く、胸は息を吸い込んだ状態で止まっている、十分に息を吐き切ることが出来ない、神経症タイプ、吐くことへの恐れ、表面へのエネルギーの過剰、体がダメージを受ける、息を吐くことが出来ないは手放すことが出来ない、胸と横隔膜・腹との一体性・全体性が必要。

呼吸と骨格についても述べていて、例えば吸気で骨盤が後傾、呼気で骨盤が前傾するなど呼吸障害が運動器の障害に繋がることもあるということです。

心理療法と鍼灸ではその基盤となるものが異なりますが、一つの参考になります。

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『カウンセリングの技法』(2025年9月)

本書『カウンセリングの技法』(國分康孝著、誠信書房)は15年ぐらい前に、問診能力の向上の一助になればと、買った本です。

今回改めて読み直してみると、面白く、腑に落ちるところが多々ありました。

幾つか列挙すると、

カウンセリングの3段階

①リレーションを作る

②問題の核心をつかむ

③適切な処置をする

カウンセラーの倫理

①秘密保持

②勉強

カウンセリング理論

①人間をどう捉えるか

②性格はどう形成するか

③問題行動はなぜ、どの様に発生するか

④治るとは何か

⑤その目標達成のためにカウンセラーは何をなすべきか

⑥クライアントは何をするべきか

⑦その方法の長短は何か

著者のカウンセリングの立場

①カウンセリング イズ アート

②折衷主義

折衷主義も大きく分けると3つの立場が有ります。

①核となる理論を持ち、その弱点を補うかたちで他の理論を導入するもの

②既存の諸理論を統合する方法

③それぞれの理論を機に応じて選択して利用する方法

著者は精神分析を核に、ロジャーズや行動療法など様々な理論を取り入れたた折衷派ということです。

本書のあとがきに著者が師の一人である霜田静志から励まされた言葉も心に沁みました。

「若いうちは、好きなことをしてメシが食えるというのはむずかしいよ。ある年齢になって初めて、好きなことが収入につながるようになる。それまでは勉強して実力を養っておくことだ。満を持して放たずというあれだよ、君」

カウンセラーと鍼灸師で異なるところもありますが、共通するところも多々あるように思います。

関連記事

『カウンセリングの理論』(國分康孝著、誠信書房)」(2024年3月)

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『中国医学の誕生』(2025年4月)

中国医学がいつ誕生したのか、はとても難しい問題で学者によって色んな説があるようです。

本書『中国医学の誕生』(加納喜光著、東京大学出版会)では幅広く中国春秋戦国時代から秦漢にかけて誕生したとしています。

こまかくいうと、春秋戦国から前漢までを医学思想の形成期、後漢を医学古典の成立期と仮説をたてています。

本書では中国医学が形成されるまで、巫医、秦医、斉医の3つの流れがあったとしています。

一つ目の巫医はいわゆるシャーマンによる治療です。中国に限らず世界のどこの文化圏でも最初の治療行為はシャーマンによる治療とされるわけですが、正統な中国医学ができると異端として正統な医学からは追い出されます。

しかし一部は祝由や呪禁、仏教や道教の中に残ります。

近代になると気功として中国医学の一部として組み込まれます。

二つ目の秦医は春秋戦国から秦にかけて西方の影響を受けた宮廷医です。

中国医学は基本的には内科学であり、外科は皮膚表面のおできなど化膿したものを切開する程度でしたが、インドやペルシャなどでは外科学が発達しており体内の異物を除去することも行われていました。そのインドやペルシャの外科学を身に着けた医者が秦医ですが、中国医学の中には組み込まれず、伝説的な外科治療の話が伝わるのみです。

三つ目の斉医は新しい治療法、鍼術を引っさげて登場した遍歴医です。

この斉医のグループは新しい医術と理論を開き、その中の一人(及び弟子たち)は諸方を遍歴して驚異的な医療活動を行い、人々からシンボリックな鳥の名をもって呼ばれ治癒神に祭り上げられた。

それが中国医学の祖である扁鵲である、としています。

事実、中国医学のバイブル的な存在である『黄帝内経』は『素問』と『霊枢』に分かれますが、大まかにいうと『素問』は生理学・病理学を述べ、『霊枢』は鍼について述べています。

極論すれば中国医学は鍼によって、鍼の理論によって作られたと言っても、過言ではないと思います。

鍼による治療は中国医学の成立から現在まで続きますが、残念ながら中国医学の中に占める鍼の地位は歴史の経過のなかでメインではなく、わきに追いやられて、漢方薬が中国医学のメインになります。

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『カウンセリングの理論』(2024年3月)

本書『カウンセリングの理論』(國分康孝著、誠信書房)はカウンセリングについての様々な理論をカタログ的に概括しているので、私のようなカウンセリングをよく知らない者にとっても、大いに参考になります。

紹介されているのは、精神分析理論、自己理論、行動主義、特性・因子理論、実存主義的アプローチ、交流分析、ゲシュタルト療法、論理療法です。

個人的に面白かったテーマは幾つかあるのですが、一つは精神分析理論の中のリビドー発達的見地というものです。

この理論では、赤ちゃんの誕生から離乳までを、口唇期と名付けています。

この理論の面白いところは、赤ちゃんからの乳の求めを親が拒否することは、単にお腹が空くとか栄養が不足するということだけでなく、愛情の拒否につながるというものです。

ですので、親の乳の拒否が多すぎると、慢性の愛情飢餓、人生に対してネガティブになりがち、逆に特に離乳期に親の乳の拒否が少なすぎると、わがままな人間、感謝を知らない人間になりがちです。

なので、与えるべき時期には気前よく与えて、離乳の時期には分離不安を感じさせないように徐々に離乳させることが大事になります。

授乳を含め食体験は愛情体験でもあるので、これがうまくいかないと甘えん坊や酒飲みになりがちとされています。

昨今食事シーンをメインにしたドラマが数多く放送されているようですが、食体験は愛情体験だと考えると現代の世相を反映しているのかなと感慨深いものがあります。

また、この理論では離乳から入園ぐらいの時期、トイレの訓練の時期を肛門期と呼んでいます。

トイレの訓練はあらゆるしつけの原点となるもので、トイレに行くまで我慢させるのがその要点となります。

トイレのしつけが厳しすぎると、四角四面、融通の利かない人間になりがち、ケチな人間になりがちとされています。

本書では、複数の理論が紹介されていますが、一つの理論で当てはまるケースもあれば当てはまらないケースもあるでしょう、複数の理論を持つということは複数のものさしを持つということですので、一つのものさしで当てはまらなければ他の当てはまるものさしを使うということです。

複数のものさしを持つメリットはあると思います。

関連記事

『カウンセリングの技法』(國分康孝著、誠信書房)」(2025年9月)

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『画像ではわからないしつこい腰の痛みを治す本』(2023年10月)

本書『画像ではわからないしつこい腰の痛みを治す本』(井須豊彦監修、講談社)は釧路労災病院脳神経外科部長である井須豊彦医師が一般の患者さん向けに書かれた腰痛の本です。

非常にわかりやすく書かれており、私たち鍼灸師も患者さんへの説明の参考になります。

いろんなことが書かれていますが、私が特に興味深く思ったのが、患者さんの腰痛に対する認識に対する啓蒙の部分です。

以下要約すると、

〇「原因が分からないはずがない」との患者さんの思い込み

高度に発達した現代医学でも実は腰痛の八割はちゃんとした原因が分からいことが多く、画像検査で見つかる異常が必ずしも痛みの原因とは限らない。

上殿皮神経障害、梨状筋症候群、仙腸関節障害など末梢神経による腰の痛みは画像では分りづらく、また心因性の腰痛もある。

〇「すぐに痛みをとって欲しい、とれるはずだ」との患者さんの思い込み

テレビなどのマスコミが盛んに神の手、スーパードクターと喧伝していますが、手術にはどんな名医であっても100%は無く、必ずリスクがある。

手術自体は成功してもしびれなどが残ることもあり、安易に手術を選択するのではなく、手術は慎重に考えたうえで選択する。

〇「症状がすべて無くなる以外治療の効果を認められない」との患者さんの思い込み

慢性の症状の原因は一つとは限らず、筋肉の強張りなど様々な要因が関係し、心の状態によっても症状の感じ方が異なる。

痛いからといって必要以上に体を動かさないと筋肉が弱まり、かえって痛みが出やすくなるという悪循環になる。 少々の痛みがあっても、無理せず出来る範囲で体を動かす。

一般の患者さんが読んで参考になることがたくさん書かれている良書です、興味のある方は読まれてみてはと思います。

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『増補改訂版 心の傷を癒すということ』(2023年3月)

本書『増補改訂版 心の傷を癒すということ――大災害精神医療の臨床報告』(安 克昌著、作品社)は阪神淡路大震災を通して心の傷を癒そうと取り組んだ精神科医の安 克昌さんの記録で、テレビドラマにもなり、非常に心打つ内容でした。

本書には個人的に参考になることがいくつか載ってましたので、紹介したいと思います。

PTSDの症状
①覚醒亢進(交感神経の活動が亢進)
②再体験(フラッシュバックなど)や悪夢
③回避(PTSDを起こした状況と似た状況を避けることで社会が狭くなる)と麻痺(心を凍らせて感情が麻痺した状態)

PTSDの治療
①安全であるという感覚を取り戻す
②その恐ろしい体験と折り合いをつける(世界はそのような恐ろしいものではない、たまたま起こった)
③生理的ストレス反応を統制する
④安定した社会的つながりと対人関係における効力を再確認する

J・T・マルツバーガー
□自殺につながる耐えがたい感情
①深い孤独感
②無価値感
③殺害に至るほどの怒り
□緩和するための道
①他者との関係
②仕事との関係
③自己の部分との関係

ラファエル
「子供は起こった出来事を自分が愛されていないとか、攻撃的なことの結果として、あるいは自分が拒絶されていることの表れとして受け取る危険がある。だから持続的な愛情と配慮で子供を安心させて元気づけてやることが肝要なのである」

外傷性記憶
①断片的
②非言語的
③悲しみや怒りなど感情を伴う(悲しみは胸、怒りは腹と結びつくことが多い)
④否定的な感情が結びつく(自分はダメだなど)
⑤自分の他の記憶と溶け込まず区画化され異物感がある
⑥自己に侵入し自己を苦しめるかたちで出てくる
⑦他の外傷性記憶とリンクしている
※外傷性記憶が消えていくときはこれらがうすまる
□治療
①安全
②想起と喪の作業
③社会との再結合

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『100年足腰』(2023年2月)

本書『100年足腰』(巽一郎著、サンマーク出版)は湘南鎌倉総合病院人工膝関節センター長である巽一郎医師によって書かれたものです。

著者は手術が専門の医師でありながら、初診の患者にはまず3ヶ月の保存療法を勧めており、軟骨が消失した膝痛の46%は手術をしなくても歩けるようになると書かれています。

それは膝痛の原因は多くは姿勢が悪くなり(頭が前に出る姿勢)その為体の使い方(歩き方)が悪くなり膝に負担が掛かるというものです。

巽医師は①体重を減量すること、②大腿四頭筋をよみがえらせること、③内もも歩きをすること、その為の体操などをレクチャーし3ヶ月間やってもらうと多くの場合改善されるというもので、それでも良くならない場合は手術検討するということです。

本書ではその他のことも色々書かれており、例えば血圧は年齢プラス90までであれば症状がなければ大丈夫であるとか、糖尿病の多くは食べ過ぎが原因であり、食べ過ぎの要因の根底にはストレスがあるとか、現在の西洋医学は原因療法でなく対症療法のための薬が出されることが多いなど書かれていました。

私も普段そうではないかと思っていたことがかかれていて、心を強くする思いでした。

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武道・東洋思想関連書籍

『老子 その思想を読み尽くす』(2024年9月)

本書『老子 その思想を読み尽くす』(池田知久著、講談社学術文庫)は『老子』の解説書ですが、私達が通常目にする通行本の『老子』だけではなく、それよりも古い馬王堆帛書の『老子』甲本と乙本、郭店楚墓竹簡の『老子』甲本と乙本と丙本、北京大学竹簡の『老子』も参考にし、その他『荘子』や『淮南子』などの道家の書や『呂氏春秋』などに引用された道家の文章などから『老子』の書を読み解こうとするものです。

古い『老子』は通行本の『老子』と比べて、分量が少なかったり、異なるところがあったりして『老子』は中国戦国時代後期から前漢初期にかけて成立したものであるということ。

他の書物の文章や『老子』の文章における言葉の使われ方から、同じ言葉でも意味合いが違っているということ、特に「自然」という言葉の使い方の違いから『老子』が古い道家の思想とその当時の新しい道家の思想が混在しているということ。

道器論(道(形而上の目に見えない万物の根源や働き)と器(形而下の目に見える万物)の関係性)が『老子』の重要なテーマの一つであると思われるが、そこから派生して聖人の無為自然が述べられ、無為(道)と自然の関係性が変化し、新しい道家の思想では自然の方にウエイトがシフトしているということ。

等々本書を読んで非常に面白かったです。

話は脱線しますが、私は子供の頃から『老子』に非常に惹かれました。

何でそんなに惹かれるのか改めて考えてみました。

『戦争と平和』や『イワンのばか』などで知られるロシアの文豪トルストイですが、『老子』を非常に高く評価していました。

彼は『老子』のこれもまた重要なテーマの一つであると思われる不争・戦争の否定の教えに感銘を受けていたようです。

人によって、色んな読み方、色んな惹かれるポイントがあると思いますが、私は何で惹かれるのか? 二点ほど思い浮かびました。

一つは、逆説的な表現。

もう一つは、読後感が息苦しさが無くなる感じ。

逆説的な表現は、ことわざなどで多く使われます。

例えば「急がば回れ」、急いでいるのだから近道すればいいのにあえて遠回りせよ、これは慌てず着実な方法をとれということを逆説的に表現したもの。

読後感が息苦しさが無くなる感じ、というのは説明が難しいのですが、例として『老子』の中に「学を断てば憂いなし」とか「無知」を勧める文章があります。

この当時の学問・知というのは儒家の学・知であり、仁や礼といった儒家の価値観、儒家の正義によって世の中を変革しようというものでした。

現代でもそうですが、一つの価値観、一つの正義によって強制される世界はあまり居心地が良くありません。

武力にしろ、知・価値観にしろ、仮にそれが正しいものであっても強制されることは良くないと『老子』は謂っているように私には思えてなりません。

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