かんたん中医学講座 第1回 「気・血・津液について」
気・血・津液は、生命力のみなもと
みなさん、こんにちは。あらためまして福田です。
さっそく、かんたん中医学講座 第1回目の講義をはじめます。
第1回目のテーマは「生命力のみなもと」である「気・血・津液について」です。
まずは、次の質問について考えてみましょう。
みなさんは、人体は、何でできているか知っていますか?次の3つの中から選んでください。
- 60%の水と40%の固形物(蛋白18%・脂肪15%・無機質7%)
- 細胞
- 骨、神経、筋肉
正解はわかりましたか?実は、上の3つの選択肢はどれも正解です。少し意地悪でしたね。
実際には、上の3つ以外でも、いろんな答えがあると思いますが、この講座は、中医学講座ですので、中医学の考えかたに基づきご説明いたしましょう。
中医学では、人体を気・血・津液・臓腑・経絡でできていると考えています。もちろん脳や骨なども認識はしているのですが、それらのものは奇恒の腑という概念でとらえており、あくまで気・血・津液・臓腑・経絡で主に構成され、それらの関係がどうなっているのかを考えるのです。
このように、世界をいくつかのパターンに分類し、その相互作用で説明するという概念は、東洋の考え方に広く存在しており、易では、世界を八卦または六十四卦で分類し、それらの相互作用で森羅万象すべてを説明します。
気・血・津液・臓腑・経絡を簡単に説明すると、「気・血・津液」は、経絡で運ばれ臓腑や体で使われる材料(生命のみなもと)であり、「臓腑」とは、体のなかにあるセンターのことで、「経絡」はその臓腑同士や体の隅ずみをつなぐ道路でであるということがいえます。
では、第1回目のテーマである、気・血・津液を順番に細かくみていきましょう。
気・・・生命を生かす神秘なるもの
東洋医学で「気」という用語はよく出てきます。近頃、ヨガや気功がブームで、「気」という言葉を頻繁に耳にする機会も多いのではないでしょうか。また、東洋思想の中でもキーとなる言葉です。東洋医学・東洋思想・気功などを、少しでも勉強すると「気」という用語がいろんな使われかたをしているので、混乱しそうになります。
もともと「気」という字は「氣」という字で、「お米をふかすときに出る蒸気」を意味していました。また「汽」という字もありますが、これは「ふかして出る蒸気」という意味で、「氣」や「汽」の原字が「气」で、「息」や「湯気(水蒸気)」や「雲気」をあらわしていました。このように「目にははっきりとは見えないけれども存在するなにか」をキ(气・汽・氣・気)という言葉であらわしたのでしょう。
このような気ですが、東洋思想で使う“大きな概念としての気”と、東洋医学で使う“小さな概念としての気”があります。大概念としての気は、「気一元」という言葉があるように、すべてのものは気によってできており、万物の変化のはたらきも気によってなされていると考えられていました。
小概念としての気は、主に飲食物から得られ、生命力のもととなるもの、または生命力そのものを指しています。
このように、東洋医学では「生命力」を気という用語で表すのですが、東洋医学では、「気」という用語を一文字で使うだけでなく、元気、営気(えいき)、衛気(えき)、宗気(そうき)、臓腑の気、経絡の気など、さまざまな表現をして使います。しかし、基本的には中身は一緒であって、使われる場所により違う名前で呼ばれていると考えて差し支えありません。つまり、小林旭さんの「京都にいるときゃ、しのぶと呼ばれたの、神戸じゃ、なぎさと名のったの~」ですね。なにっ、古いですって!大きなお世話です(笑)
気の分類
- 営気:経絡の中を流れる気。
- 衛気:経絡の外を流れる気。
- 元気:先天の気(父母から受け継いだ気)または正気(生命力)のこと。
- 宗気:肺が呼吸して天空の清気(清らかな空気)を取り入れたばかりの気。
- 臓腑:経絡の気:それぞれの臓腑・経絡にある気。例、肝気、腎気、太陰肺経の気など。
気の生成
口から入った飲食物が胃と脾によって腐熟(消化のこと)された水穀の精微(消化吸収されてできた栄養物)と、肺が天空から取り入れた清気(清らかな空気)と、腎の精気(先天の気)から生成されます。
気の働き
- 推動作用:血の運行や津液の輸布(巡らすこと)、排泄、経気の循環など、ものを動かすこと。
- 温ク作用:温める作用。
- 防衛作用:外からの邪気から身体を守る作用。
- 固摂作用:漏れないようにする作用。例えば老人で、ぶつけたわけでもないのに皮下出血することありますが、これは加齢によって気が不足し固摂作用(血管から血が漏れないようにする作用)が低下したためです。
- 気化作用:物質転化。気・血・津液の生成と相互転化。
気の病証
- 気虚:気の不足の状態。
- 陽虚:気の不足ですが、気の温ク作用の特に低下したもの。
- 気滞:気が停滞したもの。
- 気逆:下に降りるべき気が上に昇ったもの。
次のページで「血」と「津液」を見ていきたいと思います。
血
血に関しては説明はいらないと思います。手などを切ったときに出てくる、あれですね、あれ。なかには緑の人がいたりして・・・・・・。
血の分類
血自体は1種類ですが、臓腑によってよく使われるのが心と肝です。そのため、心血と肝血に分類されます。
血の生成
西洋医学では骨髄で作られるとされていますが、東洋医学では以下の2つのプロセスで作られると考えています。また、面白いところでは小腸で作られるという説もあります。(千島学説)
- 脾胃からできた水穀の精微から脾の働きで気化され、心によって赤化され血になる。
- 腎精と血は相互転化する。
血の働き
全身を栄養し滋潤する(うるおす)。
血の病証
- 血虚:血の不足。
- オ血:血の停滞によりできる病理産物。
津液
津液とは体の中の水(体液)のことです。厳密にいうと津と液は違うのですが、通常は津液というように1つの言葉として使われます。
津液について簡単に説明すると、津は、清く希薄な水のことで、血液・皮膚などに多く存在します。液は、濁って粘調な水のことで、目・口・鼻・臓腑・脳髄などに多く存在します。簡単にいうとスープとポタージュですね。みなさんはコーンスープが好きですか?それともコーンポタージュが好きですか?
津液の生成
水穀の精微の水液の部分。
津液の働き
全身の滋潤と濡養に働く。どっちも同じような意味ですが、うるおして栄養するということです。
津液の病証
- 津液不足:水液の不足。
- 陰虚:津液・血・精などの不足。
- 水液内停(湿痰など):水液の停滞によりできる病理産物。
そのほか、精や神というのもありますが、中心は気・血・津液です。
- 精:腎が蔵する物質。父母からの先天の精に、水穀の精微からの後天の精が常時おぎなわれ、腎精を形成する。腎精は生体の成長発育の根本である。腎精が枯渇すると死ぬ。
- 神:心が主る精神・意識・思惟などの活動をあらわす。
みなさんお疲れさまでした。第1回目から、かなりの分量となってしまいました。はじめてきいた概念も多く存在するため、頭の中が沸騰しているかもしれません。
第2回目は、約1ヵ月後です。「夏バテについて」でご紹介した「清熱利水」の働きのあるスイカを食べ、頭をすっきりさせてからお読みください。
以上で第1回目の講義、「気・血・津液について」を終わりにしたいと思います。ご精読ありがとうございました。