「院長の独り言」年度別

「院長の独り言」を時系列でご紹介しています。鍼灸・東洋医学に対してもっと身近に感じていただこうと、一般の方にわかりやすく鍼灸・東洋医学にまつわるトピックを中心にお届けします。民間薬草や健康食材にまつわる話、鍼灸・東洋医学・健康に関する一般書などもあわせてご紹介いたします。

「院長の独り言」年度別

2017年1月~6月の「院長の独り言」

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証(2017年6月)

証というのは東洋医学において一番大事なもので、また一番難しいものでもありますが、簡単に言うと東洋医学的な病の診立てです。

今回は「証」という漢字を考えてみたいと思います。

手元の『学研漢和大辞典』(藤堂明保編、学習研究社)で調べてみました。

(1)「證」

①あかす。実情を上司や役所に申し上げて登録する。このとおりであると、ありのままを上司や役所に申し立てる。あかしをたてる。証言。

②事実をのべてうらづける。証明。論証。

③あかしをたてる書類や物件。物証。

病気であることをうらずける(※うらづけるに修正)実際の病状。症。

⑤さとる。さとり。

(2)「証」

①いさめて誤りをただす。

通常使われる「証」は「證」という旧字の新字です。

その他に「証」という字もありました。

「證」は「言」と「登」の会意兼形声文字で「事実を上司の耳にのせる」「上申すること」転じて「事実を申しのべて、うらづける」の意となります。

「証」は「言」と「正」の会意兼形声文字で「意見を述べて、あやまりをただすこと」となります。

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『大江戸生活体験事情』(石川英輔・田中優子著、講談社)(2017年5月)

本書『大江戸生活体験事情』は、江戸時代の専門家である著者たちが文献や絵からの知識だけでなく、実際に江戸時代を体験してみようという、面白い企画の本です。

実際に火打石を使って火を付けてみたり、行燈や旧暦で暮らしてみたり、着物や下駄で生活してみたりしてどうだったかということを感想とともに書いた本です。

当然ですが、現代の方が圧倒的に便利です。

本書に書かれていますが、江戸時代の生活は、ご飯を炊くのにも知識と経験が必要な非常に手間のかかる生活で、現代の炊飯器でご飯が炊ける時代とは便利さが違います。

その半面、江戸時代は非常にエコな、省エネルギー、省資源の低コストの社会でした。

着物は何度でも仕立て直しをするし、燃やすものも薪や拾った枝で賄える社会でした。

現代社会は社会を維持するのに非常にコストのかかる高コストの社会です。

電気にしろ、販売されている商品にしろ、大量生産、大量消費が社会の基盤となっています。

経済効率の重視がその背景にはあるのですが、無駄を多く生むシステムでもあります。

まるっきり不便な社会に戻るのは不可能に近いですが、ある程度の不便さを皆が受け入れてでも、社会のコストを下げることを考えるのも必要なのではないかと本書を読んで思いました。

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春は青(2017年4月)

4月は入学式、桜の開花(北海道の桜の開花はゴールデンウィーク頃になりますが・・・)などもあり、より一層、春を感じさせる季節ですね。

春は五行では「木」となります。

五行は、木・火・土・金・水の五つですが、それぞれ色が配当されています。

木は青、火は赤、土は黄、金は白、水は黒となります。

なので、春は青色ということになります。

青春という言葉や四神のひとつ東方の神、青龍(木は東方にも配当されている)はそこから来ています。

ちなみに古代においての青色とは現在の青色では無かった様なんですね。

現代においても若葉のことを青葉と言ったり、緑色だけど青信号と言ったりその名残がありますが、古代においては現在の緑色を青色と言っていた様なんですね。

そうすると春が青というのも理解出来ますね。

春になると草花が文字通り青々と生えてくる。

なので、春は青である。

つまり、古代における青色は現代の緑色も含んだ幅広い寒色系の色のことだったんです。

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アンチエイジング(2017年3月)

アンチエイジングという言葉がよく聞かれるようになって久しいですが、アンチエイジングとは「抗老化」と訳され、老化に抵抗すること、つまり「老化による身体の機能的な衰えを最小限にして、いつまでも若々しく元気にいようとすること」です。

実践としては栄養や運動の指導、意欲向上や心身ストレスを減らすことが重要性であるとされています。

東洋医学としてはこの問題をどう捉えているかというと基本的には元気が段々少なくなっていくことにより身体の機能的な衰えが起こると考えています。

東洋医学においては元気のエンジンが先天の元気と後天の元気の二つあります。

後天の元気は五臓の脾の臓が中心で、飲食物から生みだされた元気です。

先天の元気は五臓の腎の臓が中心で、生まれながらに持っている元気です。 

先天の元気はちょっと分かりづらいかもしれませんが、植物の種をイメージしてみてください。

植物の種は外からのエネルギーを得ずに発芽し根を出します、ある程度根が張り葉が育って外からエネルギーを得るまでは種が本来持っているエネルギーが必要です。

人間も赤ちゃんがオギャーと生れて、お母さんの母乳で育ちますが、いかに母乳が栄養価が高いとはいえ、短期間にあれだけの成長をするには、植物の種の様に人間にも生まれながらに持っている元気が必要と東洋医学では考えます。

生まれてからある程度体が育ち、飲食物から後天の元気が十分に生み出されるまで、先天の元気のエンジンはフル稼働ですが、その後は後天の元気のエンジンがメインになります。

しかし先天の元気のエンジンもある一定出力し続けているので、やがて先天の元気が不足するようになり、それが老化による身体の機能的な衰えとして現れます。

そのため東洋医学では先天の元気を補いつつ(限度はありますが食べ物などによってある程度補えます)使いすぎない様にすることが、東洋医学的なアンチエイジングになります。

話は脱線しますが、個人的にはアンチエイジングという言葉の響きには少し違和感があります。

アンチエイジングが目指す効果にはもちろん異論はありませんが、アンチエイジングという言葉の響きの奥には老化という自然の摂理を忌むべき対象物として捉える意識があるように思います。

東洋医学というものは「自然に逆らわず、人を幸せにする技術」であります。

エイジング、歳をとることは、忌むべきものとして捉えるのではなく、人間をも含んだ自然の摂理であり、受け入れていくべきものだと思います。

その中でどの様にエイジング、歳をとっていくのかが大事だと思います。

アンチエイジングではなく、何かもっと別の言葉、例えばグットエイジング、「良い歳のとり方」、などの方が個人的にはしっくりくるような気がします。

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豆まき(2017年2月)

2月の節分には豆をまきますが、では何故豆をまくのでしょうか?
その理由として様々な説があります。

もともと豆まきは中国から伝わった風習ですが、豆は「魔滅(まめ)」に通じ、無病息災を祈る意味があるというもの、鬼の目(魔目=まめ)に投げつけて鬼を退治したからというものなどです。

豆まきは一般的に、一家の主人あるいは年男が炒った豆をまくものとされています。(現在はお子さんや家族みんなでまく方が多いのではないでしょうか。)
このときにまく豆は炒った豆でなくてはならないとされています。
なぜなら、生の豆を使うと拾い忘れた豆から芽が出てしまうと縁起が悪いからだそうです。

一般的にはこのように説明されていますが、次のような面白い説もあります。

古代においては一年の始まりは春からでした。(年賀状にも迎春と書きますね)
春は五行思想では「木」となりますが、五行の関係で「金克木」となることから穏やかに春(木)を迎えるには「金」を避けねばなりません。
「金」は形としては円い性質をもっています、豆も円いので、豆を「金」と見立てて、その「金」を弱めるために(火克金)火で豆を炒るのです。

そして炒った豆(弱った金)をまく、つまり投げつて傷めつけることで「金」を更に弱め、更に食べて無くすことにより、一年の始まり(春=「木」)を穏やかに迎えるというものです。

一家の主人あるいは年男が炒った豆をまくというのも、古代においては儀式は本来男性、特に家長の役割でした、また年男は新しい一年を暗喩しているのかもしれません。

様々な説があるので、どれが正解かは分かりませんが豆まきという行事の成立にも陰陽五行という東洋思想が関与しているとしたら面白いですね。

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2017年年始のご挨拶 ~健康維持の養生法~(2017年1月)

あけましておめでとうございます。

本年も無事にお正月を迎えることができました。

これもひとえに太玄堂を支えてくださる皆様のお蔭だと思っております。

少しでも皆様方にお返しができるように本年も精進したいと思っています。

さて、健康の維持には治療だけでなく、日々の養生も大事です。

書籍等で様々なものが発表されていますが、私なりにまとめてみました。

養生法

○養生の第一は心の平安

○ユーモアで人生を笑い飛ばそう

○食は人を良くするもの、過不足なくバランスよく食べよう

○人は動物、動くもの、適度な運動を

○長息は長生き、歌や呼吸法を

○快眠、快食、快便を

○何事もほどほどに

○日々感謝の心を

本年も皆様が健康でありますよう心よりお祈り申し上げます。

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